2015年8月23日日曜日

ARTIST TALK 福川拓也 「色といろの景色」

8月17日(月)、634展示室で展示中の福川拓也先生によるアーティスト・トークが行われました。
福川先生は、現在ムサ院の日本画科で指導していますが、今回は「予備校講師」ではなく、
「作家」としてのお話を伺うことができました。

まずは、福川先生の展示の様子をご覧ください。
映像ではちょっと分かりにくいというか、非常に繊細な作品なので、まだ見ていないという方は、
ぜひ実物をご覧になって下さい。8月28日(金)16:00まで展示しています。

作家(アーティスト)、福川 拓也 (FUKUGAWA Takuya)。
横の作品は、受験生時代に描いたもの。福川先生はムサ院出身。みんなの先輩!
現在の作風とは全く違いますが、これ(基礎力)があってこその今だそうです。
大学に入って、まず言われたことは、
「予備校で学んだことはもう忘れなさい。」
という事だったとか。もう十分基礎力は身についているから、これからはそれに縛られることなく、自由になりなさいという意味です。基礎力を忘れるのではなく、基礎力があるからこそ、自由な表現が可能になるのですね。

福川先生の作品のテーマは「シンプル」だそう。
今回は、作品一つ一つはもちろんですが、空間を楽しんでもらいたいという思いがあったそうです。
そのために、色の広がりを考えた配置を吟味して展示しています。


福川先生の作品は、「日本画」です。
「日本画」っていうと、どんなものを想像するでしょうか。
水墨画?ふわっとあっさりしてるもの?浮世絵?
そんなイメージで福川先生の作品を見ると、ぜんぜん違う!と思うかも知れませんね。
現代において日本画の表現の幅はどんどん広がってきています。
日本画では、“岩絵の具”というものを使うのですが、要は色のついた岩を砕いて粉末にしたもので、昔は天然のものしかありませんでした。当然、色数も少ないし、色によってはものすごく高価だったりします。例えば、青色とか群青色とかの岩ってその辺で見かけたりしませんよね?希少なもの、言ってみれば宝石を砕いて絵の具にするようなものなのです。(参考 → 絵の具の話。)

そういうような制限があったからこそ、少ない色数の中でどうやったら表現できるかを追求していった結果、独特な文化や、素晴らしい作品が生まれていったのです。
今は、人工的に色を作れるので、色幅もものすごく増え、どんどん便利になってきています。
なので、今は日本画と言うジャンルでも、すごい表現の幅が広がってきているのです。


634展示室に入ってすぐの場所です。
「雨」をテーマにした作品が並んでいます。


「水面に落ちた雨の波紋を描いています。
実際の波紋は、輪が二重三重になるのですが、そういう要素を削ぎ落していくことによって、本当に言いたい事を明快にすることができるのです。」


「写真みたいにリアルに描くこともできるのですが、絵って、絵らしければいいんだなって思ったんです。絵でしかできないことをやればいいんだなって。なので、僕はリアルに描く路線よりは、単純化していく、色面で見せていく方法でやってきました。
こういう絵は、心象風景だと思っています。青っていう落ち着いた色と、ぽつぽつぽつ…と言うリズム、それが画面全体を支配しているんですが、ずーっと眺めていると、なんか落ち着いていく、場合によっては不安とか、悩みとか、そういうネガティブなイメージでもあるかと思うんですけど、そういった悶々とした気持ちとかを投影しています。」


「この作品は、雨が降って、看板や信号などの街の明かりが映りこんだ、濡れた路面を描いています。
こちらは、心象風景と言うよりは、トリミング(切り取り)の形によって発見できるリズムや面白さを、見たまま楽しんでもらえればと思います。
この作品の描き方はけっこう複雑で、最初に光となる色を描いてから、全面に青を重ねています。なので、一回真っ青な画面になります。そこから、画面を“洗い(=絵の具を取る)”ます。顔料(絵の具)と和紙をくっつけている膠(にかわ)は、水に溶ける性質があるので、乾いた後でも濡れると一時的に接着力が弱くなって、“洗う”ことが出来るのです。そうやって画面を洗うことによって、下地にあった色を出していくのです。」

展示室の中に入っていくと、「花」をテーマにした作品が並んでいます。


「花はなんで人を惹き付けるのでしょうか。植物は植物だけでは生きていけません。虫や鳥がいてはじめて繁栄していけるのです。植物も生存競争をしていて、そのためにはすごく魅力的でなければ生き残れないのです。他の生物を惹き付るための美しさなので、花を綺麗と思うことは当然なんです。」


 「花の持つ美しさには、色や形、においなどありますが、僕は色そのものを美しく感じられるように描いています。なので、それ以外の情報を極力削ぎ落としています。実際ははなびら一枚一枚、雄花雌花、枝もいっぱいあったりとかするんですが、とにかくそういったものを極力排除して、その花が持つ色の美しさそのものを見せたいという作品になっています。」


「これは、イチョウです。この作品は、比較的粗めの岩絵の具を使っているので、キラキラして見えると思います。岩絵の具っていうのは、こういう表情を出すんです。単純に素材感として綺麗というのも、ひとつ日本画の特長ですね。」


ちょっとテーマが変わって、「地平線」の作品。


「地平線も、ものすごくシンプルな題材ですよね。真っ白な紙に横に線を一本引いただけで、地平線になります。もちろんそれは見る人のイメージだったりするのですが、でも、線一本引いただけで、そこに地面と空という二つの境界ができて、それだけで具体的な絵になるんです。」


展示を見に行くことはあっても、なかなか作家さん本人に話を聞くことができる機会は少ないと思います。ぜひもう一度、634展示室に足を運んで、実物を見てみて下さい。




2015年8月19日水曜日

多摩美術大学グラフィックデザイン学科、学科説明&講評会

夏期講習会も中盤に差し掛かった8月7日(金)、多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン学科の小泉雅子教授がムサ院に来てくれて、学科説明と講評会が行われました。


 合格者作品の解説、学科説明。


 生徒の作品の講評。


 皆さん真剣に聞いています。


暑い中、ありがとうございました。

2015年8月18日火曜日

「高1・2年生」「中学生」のための無料体験授業 夏期講習編 PART②。

夏期講習会もいよいよラストスパート。受験生は夏の最終ターム【後期】が始まりましたが、 
“【中期】の最終日” から “【中期】と【後期】の谷間” にかけて、
アーティスト予備軍のための2日間の「無料体験授業 PART②」が行われました。

2日コースと1日コースでは、モチーフの石膏像のサイズが違います。
2日コースはこちらの3体。
ブルータス。
おまえもか!…の人ではない(らしい?)。
ブルータスを描く時のポイントは?
左右の肩の位置に気を付けて。威張ってる感じ。何よりボリューム感!
構図としては、下は入れて、上は少し切れるくらいで。

モリエール。
後頭部は帽子ですよ?
モリエールを描く時の注意点は?
たまってる方の髪の毛(左側)と、ひっぱられてる方の髪の毛(右側)の違いを意識する。
ネクタイ?マフラー?スカーフ?ストール?と首の間の空間を出す!

マルス。
「アイスラッガーは入れる!」→ブログ記事参照

ブログ記事参照とか書いておきながら、記事の続編はない(笑)のでヒント画像。
夏期講習会最初の課題でした。
マルスを描く時のキモは?
カブトのレリーフを利用しながら、正面・側面の区別をつける。
左右の肩の違い、特にひいてる方に気を付けて!

マルスは、木炭デッサンの描き出しの動画もあります。参考にして下さいね。


1日コースはおなじみのこの方。
ラボルト。
安定のアタマのデカさ。正面からだとそんなに分かんないけど。
ラボルトを描く時のココロ配りは?
首の傾き。やっぱりアタマのデカさ!首の割れてるカタチがけっこう大事!

この方が頭のデカさが伝わるかな?


出来上がった作品は、経験者も未経験者も、なかなかの力作ぞろいでしたよ。
先生たちの講評にも力が入ります。




講評中、何となくよそよそしい感じの二人(笑)。

2015年8月16日日曜日

夏期講習会【中期】終了!

夏期講習会も3分の2が終了しました。
今日は【中期】の最終日。という事は、あちらこちらで講評です。

講習会が進むにつれて、講評も厳しくなっていきます。
もちろん、上達してきてるからこそ厳しくなっちゃうんですけどね。
採点中の先生たちの会話はよ~く聞いといた方がいいですよ? ・・・雑談も多いけど(笑)。
日本画の着彩写生と、芸大系の立体構成の講評。 隣り合わせでやってました。
デザイン・工芸科、立体系の講評。 平面構成ですね。
デザイン・工芸科のビギナー受験生コース。 こちらも平面構成の講評です。
油絵科の作品は、バラエティがあって面白いです。 そういう感想はざっくりし過ぎですか。
      
油絵科の先生は二人とも「指導棒」を持ってました。 昔は結構みんな持ってたような。

自分の中で、多少でも上達してきている実感は持てているでしょうか?
明日は1日お休みですが、講評を思い返して、自己分析をしてみると良いかも。

で、夕方16:30からは、日本画の福川先生のARTIST TALKへ足を運んでみて下さいね。